催眠療法を受けて母に会った話

 一昨年の話。

 母を突然失った私はパニックになり、酷い娘であったことを責め、うつ症状が悪化の一途をたどっていた。夫に苦悩を打ち明けようにもそういう話は聞きたくないと拒否されて避けられるようになり、孤独のまま早く死にたいと自傷する日々。精神科に行っても、薬を処方してくれるだけで話を聞いてくれる訳ではない。勇気を出して『いのちの電話』に電話したがなかなか電話は繋がらず、やっと繋がったと思ったら私の言葉をただただオウム返しされるだけ。わずかに残った理性の部分がこれはなんとかしなければと、自費でカウンセリングを探して受けることにした。

 カウンセラーの先生は同年代の、穏やかそうな男の先生だった。自分がどうしてこうなるに至ったかをかいつまんで話したら、すごくわかりやすいとほめてくださった。そして死についてとか、無意識についてとか、いろいろ教えてくださった。エリザベス・キューブラー・ロスの本「死ぬ瞬間」に書かれている、人が死を受容する5つの段階「否認→怒り→取引→抑うつ→受容」を知ったのもこの時。

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 私は本当はこういう話をずっと誰かとしたかった。夫とは友達関係から結婚に至ったので、元気な時に遊ぶ相手としては楽しいが、心の奥底を話したことはない。最近気づいたのだが、彼は自分の目の前で起こっている事実しか興味がないようだ。聞けば他人を分析はおろか自省すらしたことがない(そんな時間があったら寝る)とかで、精神世界には全く興味がないらしい。私が24時間自問自答を繰り返しているのとは全く対照的で、だから私は精神的にいつも孤独なのだと思う。

 話は逸れたが、面白いことにこの先生はセラピーの一環として、「催眠療法」や「前世イメージ療法」の技術も持ち合わせていらっしゃった。これらはマジックとかではなくて、脳の90%以上を占める「潜在意識(無意識)」に働きかけるカウンセリングなのだ。難しいことはわからないが、小さい頃の記憶とかも全部この潜在意識領域に格納されているらしい。例えばそれが歪んだ形で格納されていてトラウマとなっているせいで今の自分が生きづらいのなら、潜在意識を書きかえてあげる?そんな感じなのだと思う。

 私は幾度目かのカウンセリングの時に、この「催眠療法」をお願いしてみた。薄暗くしてアロマを炊いた室内で、リクライニングチェアにゆったりと仰向けになりブランケットをかけてもらって目を閉じる。雲に乗って空から地上を見ています・・・そんな導入だったかな。一番楽しい時代に戻ってみましょう・・・そこで私は大学2年生に戻った。校舎の前の広場で、好きな男の子の話で友達とキャッキャと盛り上がっていた頃。先生の質問にいくつか答えながらニヤニヤしてしまった気がする。

 それからどういう流れだったのかは忘れてしまったが、とにかく私は母に会った。私は幼稚園の制服を着て生まれ育った家の一室に立っていて、目の前には母がいた。美しく気の強そうな若い母。死んだはずの母に会って、私は泣いてしまった。けれども母はカンカンに怒っていた。私はごめんなさいと謝ったが怒っていた。すると先生が「私は妖精になって、ヒラヒラと蝶のように飛んでいます。お母さんの耳元まで飛んで行って、怒らないでってささやいてあげましょう。」と言うから、私は慌てて「ダメー!叩き落とされちゃう!」と余計に泣いてしまった。それぐらいの剣幕で母が怒っていたから。

 結局、先生が「それは大変だ、今日はこのぐらいにしておきましょうか」と言って、この日の催眠療法は終わりになった。ゆっくりと意識が現在に戻ってから「お母さん、なかなか手ごわいですね」と優しく微笑まれたので、「もうちょっとで叩き落とされるところでした。母がご迷惑をおかけしてすみません。」と先生に平謝りする私。これは成功とは言えなかったのかもしれないが、終わった直後の気分は一言で言えばなぜか「スッキリ」だった。

 先生にはそれから何度かオンラインで悩み相談に乗っていただいたが、精神科の処方薬が効いてきたのか母喪失感が時間とともに薄らいできたからか、私のうつ症状が少しずつ回復してきたのでいつしかカウンセリングにも行かなくなった。結局「催眠療法」を受けたのは後にも先にもその一度きり。でもあれは不思議な体験だった。若かりし母に会えたのも、母が妖精さんを叩き落としそうになってたのも、クスっと笑いそうになってしまういい思い出の1つになった。それがまたいつしか潜在意識の1つになっていくのだろうなと思う。

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