欲求に忠実な夫と欲求がない私

 我が夫婦は、夫が「自分最優先」なのに対して私は「自分後回し」という、正反対の価値観を持っている。それが最も顕著に出ているのは、自分の生理的欲求を我慢できるか否かというところにあると思う。

 私は、人間の三大欲求「食欲」「睡眠欲」「排泄欲」は全てある程度コントロールできるのでみんなもそうだと思っていた。例外はお腹を下した時ぐらい。(三大欲求に「排泄欲」のかわりに「性欲」を入れる人もいるが、あんなのは欲求ですらないと思っている。)
 でも夫は「生理的欲求は我慢できないのが当たり前」と言って悪びれない。「トイレ」とか「居眠り」とか自分の欲求を最優先にすることで他人に迷惑をかけたとしても、あまりにも堂々としていて申し訳なさそうにする素振りすらないので、一緒にいる私がかわりに謝ったりしてしまう。

 そういえば学生時代、テニス部の合宿で深夜に幹部ミーティングをしていたら寝てしまった人が二人いてめちゃめちゃ怒られてたのだが、その二人は謝ることなく何故かあからさまにふてくされてたことを思い出す。今考えると、あの二人は夫みたいなタイプだったのだろう。そういうのって一緒に生活してみないとわからないものだよね。

 私は「食べるな!」「寝るな!」「トイレに行くな!」「そんなことより私の話を聞け!」と怒鳴り声が聞こえるような家で育ったので、己の生理的欲求より他人のケアを優先するのが当然になってしまったのかもしれない。欲求を抑制しすぎて、なんならほとんど感じないまである。気づいたら食べてない、気づいたら寝てない、気づいたらトイレ行ってない・・・

 例えば夫婦で買い物に行って、夜ご飯のお弁当を買って帰ってきたとする。夫は帰るとすぐ自室で着替え、トイレに行き、歯を磨いたりなんならシャワーを浴びたりしてから、食卓に座って勝手にお弁当を食べ始める。
 でも私はまず買ってきたものを片付けたり冷蔵庫に入れたり、犬に「ただいま」と話しかけて撫でたり、犬のトイレシーツを取り換えたり、窓を開け閉めしたりカーテンを閉めたり、犬の夜ご飯の準備をしたり、食卓のセッティングをしたり。そんなこんなしていると夫が座ってご飯を食べ始めるから焦って、慌てて私もトイレに行ったり寝室で着替えたりするのだが、私がようやく座ってご飯を食べる頃には、夫は「ごちそうさまー」とご飯を食べ終わって、ゴロゴロとテレビ見てくつろいでたりして。私は食べ終わってからも、犬にお給餌して、犬に投薬して、食卓を片付けて、お茶を入れて・・・んでやっとくつろげると思う頃には、夫は「もう寝る。ぐりえちゃんも早く寝なー」と言いながら一人で寝てしまうという感じ。

 彼に悪気はないのだ。彼は単純に自分の欲求に忠実に従っているだけなのだ。「私が座るまでご飯待てないの?」とか「そんな早く寝ないで」と言っても「生理的欲求は我慢できn(略)」
 めちゃめちゃ寂しいけど、そういう価値観の人なのだからこればっかりは仕方がないのだ。

 「自分最優先」と「自分後回し」という正反対の価値観は、衝突しないので相性がいいと思われるかもしれないが、常に我慢しつづける私はたまったもんじゃない。夫には「ぐりえちゃんはいつも他のことしてモタモタしてる」などと言われるのも心外だ。

 彼を変えることはできないので「これからは私も自分優先で好きなように生きよう」とは思ってみたものの、いざ考えたところで自分のやりたいことがわからなくて困ってしまう。みんなが喜ぶようなことをしたいとか、犬が幸せに暮らせるようにしてあげたいとか、そういう他者のためのことは思い浮かぶのだが、私の私による私のための欲求とは何ぞや?
 そういえば終活をしていても、よくある「死ぬまでにやりたい10のこと」とか書こうと思ったこともない。自分がやりたいことを10も捻出するとか無理ゲーだ。ただただ早く何もしなくていい世界に行きたい。

 ああそうか。ここまで書いててわかった。私の唯一やりたいことは「何もしないこと」だな。誰かのために動かなくていい、食べなくていい、寝なくていい、トイレにもいかなくていい生活とか最高じゃないか。
 ただ・・・それって生きてるのかな?

コメント

  1. 門傳 由美子 より:

    おばちゃんのやりたいことは死んでしまうこと
    でも犬猫に罪は無い置いて逝くことはできない
    1番若い猫でまだ4才くらいだから
    まだまだ生きて旦那の奴隷として家事などをしないといけない
    買い物に行っても駐車場から家まで荷物を持ってはくれるけど
    なるべく軽い物を持つ旦那
    そして生ものもあるのに「一服してからにしなよ」とか言う
    おばちゃんはすべてを冷蔵庫に仕舞ったり
    着替えたりしてから手を洗いそれから座りたい
    ご飯を食べる時はおばちゃんが席につくまで待っていてくれるけど
    何も話さず少量の食事しかとらずに食べ終えて一服&放屁
    まだ食べてるんですけど・・・
    放屁はまだ我慢ができるけどしっこを我慢することができなくなっていて
    ナプキンのようなパットを当てているにもかかわらずトイレを汚す
    結婚したのが旦那が47歳おばちゃんが24歳
    それくらいの年の頃はまだ旦那もシャキシャキしていて
    仕事に燃えていた
    今毎日家にいられると苦痛でしょうがない
    何が言いたいか自分でもわからなくなってきてしまった
    ぐりえさん、ゴメンネ

    • どん ぐりえ どん ぐりえ より:

      由美子さん
      わかるよーわかります
      夫婦と言えども他人だから自分と価値観もペースも違うのが年々目についてしょうがないですよね
      こういっちゃなんだけど、順番でいったらほぼ絶対に旦那様の方が先に他界するのだから、それから第二の人生楽しんでね!
      ほんとそれを楽しみにしててー

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