「ホモ・デウス」を読んで想像した未来

 知人にお薦めされて、ユヴァル・ノア・ハラリ著の「ホモ・デウス」を読んだ。ハラリ氏はイスラエルの歴史学者であり、2011年に執筆した人類史「サピエンス全史」は30以上の言語に翻訳された世界的なベストセラーらしい。読んでないけど。
 「ホモ・デウス」はその続編なのだろうか。人類がこれまでどう進化してきたか、ハラリ氏の考えをひたすらダラダラと長ったらしい言い回しで綴っていて、最後にさらっと人類はこれからどう進化していくのかを提起している本であった。(言い方!)

 結局何が言いたいんだ?と思いながら読んでいたら、最終ページにまとめがあった。なんだ、そこだけ読めばよかったんじゃん。

ハラリ氏が予測する三つの相互に関連した動き
  1. 科学は一つの包括的な教養に収斂しつつある。それは、生き物はアルゴリズムであり、生命はデータ処理であるという教義だ。
  2. 知能は意識から分離しつつある。
  3. 意識を持たないものの高度な知能を備えたアルゴリズムが間もなく、私たちが自分自身を知るよりも私たちのことを知るようになるかもしれない。

生き物はアルゴリズム

 1の「生き物はアルゴリズム」「生命はデータ処理」というのが、わかってはいたもののよくよく考えると衝撃だ。

 アルゴリズム、つまり必ず同じ答えが出る計算方法や処理方法のこと。我々が何かに反応して動いているのは、外界から得られるデータを決まったアルゴリズムで処理した結果でしかないというのだ。そしてそのアルゴリズムは遺伝子経験(データのパターン)で決まってくる。
 つまり、今、私がこんな風に感じて動いているは、偶然でもなんでもなくて必然。

 ”無意識”がアルゴリズムである、というのはわかる。自動的に体が動いちゃうんだから、遺伝子レベルで決まってる動きなのかもしれない。
 でも「私自身が頭でよくよく考えた末に動いてる」と思ってることまでもが、プログラムされた単なるデータ処理でしかないとしたら・・・私の”意識”ってなんなんだろうと思ってしまった。ブログにくよくよと「あーでもないこーでもない」と書き綴ってる私の”本当の気持ち”は、データ処理の結果でしかないの?

 いや、でもそれ、怖いけど気が楽になるかも。「私はなんでこんな風に考えちゃうんだろう」などとくよくよ考えるのは無駄!結果は決まってる!ってことがわかれば、悩みが一つ減るってもんだ。 

価値がなくなる人間の知恵

 2と3の「意識から分離した知能」「意識を持たない高度な知能を備えたアルゴリズム」は、ざっくり言えばAIのことだろう。
 ハラリ氏の主張によれば、「資本主義」「人間至上主義」に取って代わる”新興宗教”は「データ至上主義」であるという。これは「森羅万象はデータの流れからできている」と考えるもの。
 1のように生き物がデータを処理するアルゴリズムにすぎないとすると、「データ至上主義」において人間が誇る「知恵」というのは

  • データ ─(洗練する)→ 情報
  • 情報 ─(洗練する)→ 知識
  • 知識 ─(洗練する)→ 知恵

という処理の結果にすぎないということになる。そしてデータが爆発的に溢れるそう遠くない将来、このアルゴリズムは全て電子工学的アルゴリズム(つまりAI)に任せるべきだ、というのが「データ至上主義」の見方。
 これには納得。

AIが人間のアルゴリズムを担う時代

 そんな時代になったら、人間はどう生きるんだろうね。

 財力や権力を持つ人ほど、AIをフルに使って、働かなくても考えなくてもお金が入ってくるような仕組みを手に入れるだろうね。そうなるとAIを使う層と、AIに使われる層で深刻な分断が起きそうだ。ちなみにハラリ氏が「ホモ・デウス(神のヒト)」と言っているのは、このAIを使う限られたエリート層のことらしい。
 人間が働かなくても経済が回るようになるから、「ホモ・デウス」ではない一般人はベーシックインカム状態になるのかな。働かなくていい、というか何かしたくても何もやることがない状態になるかもしれない。ただ遊んで暮らす?今の私たちには夢のような話だが、生まれたときからそういう世界だとなんだか馬鹿になっちゃいそう。
 たぶん「それじゃ嫌だ!」って思う意識高い人は、知的好奇心を満たす作業をお金を払ってやることになるのではないかな。お金持ちがジムに通って体を鍛えるみたいに、お金を払って知的作業(生産性はない)に没頭する。その頃はその頃で、意識の高い人とアホみたいにボーっと遊んでる人で分断が起きそう。

 でもそういう時代になると、何のために生きているのだろうという自問自答が今より深刻になりそうだ。生殖の目的もよくわからない事になりそう。人類滅亡というBAD ENDも見えてきそうですな。

そんな時代はいつ来るのか

 私が生きてるうちに、人間がやることなくなっちゃう時代がくるのかなあ。それは遠い未来のようでもあり、あっという間にやってくる現実なのかもしれない。

 だけど私はそんな事より、20年後ぐらいの社会保障がどうなってるのかの方が心配だわ。今でさえ「若者の負担がー」って高齢者バッシングが始まってるのに、私が高齢者になるころには年金も医療費も今よりずっと絞られてそう。お先真っ暗。

 ちなみにハラリ氏の2025年最新作は「NEXUS 情報の人類史」。そのうち読んでみよう。

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