勉強するおばさんは孤独なり

エッセイ

 一昨日、コロナワクチンを予約していたかかりつけ内科に行った。先生に数日前にあった死にそうになった話を事細かに話しながら、ワクチン打っても大丈夫か聞いたのだが、先生は呆れたように笑いながら私の話をほぼ否定した。過換気でしょうね。オキシメーターの数字もちゃんと測れてなかっただけじゃないですかね。そんな数字だったら死にますよと笑われた。「だから本当に死にそうだったんです!」と食い下がったら「そういう時は救急車呼んでくださいね。」フッ

 全くその通り。その通りなのだが、すごく頑張ったことを否定された気がして私はなんだか落ち込んでしまった。とりあえずワクチンを打ってもらって家に帰ったら、夫がリビングにいて「どうしたの?」と聞いてきた。なので一生懸命に先生に言われたことをそのまま伝えたら「えー?そんな言い方しないでしょ」と今度は夫にゲラゲラ笑われた。

 その瞬間、私の中の何かが壊れた音がした。あれ・・・私の言う事、誰も信じてくれない?もしかして私の言う事、全部嘘?数日前に倒れたことも、かかりつけ医に笑われたことも、全部私の妄想?もしかして私、嘘つき?

 もう頭がおかしくなりそうだった。人が人を狂わせるのは簡単だなと思った。その日は涙が止まらなくなってしまったので、そのまま頓服をガッツリ飲んでとにかく寝た。翌日はワクチンの副反応で熱が出たので、またいっぱい寝た。

 その夜、飲み会から帰ってきた夫が寝てる私に「どうしたの?」と尋ねるので「私ってこの前倒れたよね?」と聞いてみたら「倒れたんじゃないの?」と他人事。彼は自分の事以外は興味がなく忘れてしまうので、記憶もおぼろげらしい。「オキシメーター赤点滅してたよね?」「してたと思うよ」「酸素缶吸ったよね」「吸った吸った」少しは覚えていたようだ。また涙が出てきてしまって「私は嘘つき?」と聞いてみたら、「嘘つきじゃないよ」とそれだけはしっかり言ってくれたのでワンワン泣いた。

 少し落ち着いた頭で考えて思うのだが、”おばさん”って基本的にバカにされるよね。夫と一緒にいるとちゃんと人間として扱ってもらえるのに、私一人だとよくバカにされる。私だって若かった頃、そして企業の一員としてバリバリ働いていた頃、身なりもよく肩書もあって誰もが一目置いてくれて話もしっかり聞いてもらえてたのに。それなのに、今はどこからどうみても不摂生で小太りのただの”おばさん”。肩書などなにもない。私がいくら本当の事を一生懸命しゃべっても、その場でエビデンスが出せないと「ははは(笑)」とバカにされる。女性週刊誌と昼のワイドショーとネットの口コミサイトだけ見てる情弱お馬鹿さんだと思われてるのかもしれないと思うほど。

 こう見えても私は夫よりパソコンにもネットワークにも無線通信にも詳しいし、夫より車庫入れも縦列駐車も上手いし、ビジネスの常識だって冠婚葬祭の常識だって世の中のニュースだって夫よりずっとずっと知ってる。だけど世間では人権があるのは夫だけで、私は情弱無職の”おばさん”。なんでなん。働いてないからか。そうなのか。

 私は目も耳も超敏感で常に脳がくるくるくるくる動いていて、わからないことは自分が納得いくまで徹夜してでも調べて勉強する、かなりの情報強者である。ただ「能ある鷹は爪を隠す」がポリシーなので、普段はなるべく悪目立ちしないようにできるだけ穏やかにアホの子のふりをしている。でもそうやって自分を隠すような事をしているのが無性に疲れる時があるし、逆にバカにされたりすると「なんでなん?」って泣きたくなる。同じような人いるかな。いるかな。すごくすごく孤独だよね。

(おまけ)
 夫に「自分で色々調べすぎて先生に『AかBじゃないですかね?』って聞いちゃうから先生もカチンとくるのかな?」と言ったところ「自分で調べなければいいんじゃない?」と真顔で言われました。へ?そうなの?

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