嫌悪

　父が家にいるようになってから母はとても上機嫌で、私が悩んでいたのはなんだったんだろうと思うぐらい穏やかだ。最初はまたいつ豹変するかとビクビクしていたが、ここのところずっと安定しているのでだんだん嬉しくなってきた。やっぱり私は本当は母に愛されたいと思っていたのだろうし、母のことが好きだったんだなと思う。
　ところがそれと反比例するように、優しい母の悪口を言っていた自分がすごく惨めな人間だと思うようになってきた。これまでは自分のことを守ろうとして自分を正当化するために、あえて人を嫌いになっていたような気もするのだ。そしてそんな自分に気づいてしまった今、私は自分がとても嫌い。
　自分を好きになると人のことが嫌いになり、人のことを好きになると自分が嫌いになる。自分も人もみんな大好きみたいなお花畑な状況って、なかなか考えられない。うまくバランスを保っていればいいのだろうが、どうも両極端になってしまうのは私の悪い癖なのか。