うつ病からの卒業

うつ病

 今日は月に1回の精神科への通院日だった。そしてとうとう最後の通院日になった。「薬なしでもやっていけそうな気がします。」と先生に言ってみたのだ。「やってみますか。」と先生。「あと1回ぐらい来ますか?」と聞かれたが、何かあったらまた来ることにして予約は丁重にお断りした。たいして用もないのに外出するのは相変わらず面倒くさいので。
 最後は、先生が席を立ってお辞儀をしてくれた。10年前に夫に連れられて初めて来た時のことを思えばずいぶん昔のことのようだが、途中の記憶がほとんどないのであっという間のような気もする。カウンセリングのようなものは全くなく投薬のみの診療だったので、先生との特別な信頼関係や依存はない。お世話になったと思うのは、会社に提出する診断書を毎月書いてくれたことと入院を決めてくれたことぐらい。でもやはり最後ともなると感慨もひとしおだった。学校を卒業するような気分だ。ちょうど3月だし卒業するにはいい季節かもしれない。菓子折りの1つも持って来ればよかったと思ったが、今時そんなことする人もいないだろう。
 しかし薬を飲まない=うつ病完治なのだろうか。昨日までは障害者だったこの私が、今日からはいきなり健常者なのだろうか。そう思うと大海に放たれた魚のように不安になる ―― いま「大海に放たれた魚」を調べてみたらイキイキと走り回る意味だったことがわかり、使い方が全然違っていて苦笑してしまった。まだネガティブ思考は変わらないようだ。まあ焦っても仕方ない。私は私。これまでと変わらず自分を甘やかしながら、のんびり過ごしていこうと思う。
 帰り道、ホームセンターに立ち寄ってまな板を買った。なにかを新しくしたかった。しばらくはまな板を見るたびに、最後の通院日に買ったんだよねなどと思い出すのかもしれない。

 今うつ病で苦しんでいる方へ。私も治ったのだからあなたも治りますよ希望を持って、などと言わない。他人の事例を知ったところで全く意味はなく、むしろ余計に落ち込んでしまうこともあると思うので、むしろ私のことは気にしないでください。ただゆっくり休んでほしい。ゆっくり甘えてほしい。神様が無理するあなたにストップかけるために、体の症状を使って教えてくれてるだけだから。今のあなたがすることはただ休むこと。眠ること。その分、元気にしてもらえた私たちが恩返しのつもりで頑張ります。おやすみなさい。

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