NHKの『病院ラジオ~埼玉県立がんセンター編~』を見た。
毎回心ゆさぶられる『病院ラジオ』だが、今回も終始泣きながらの鑑賞となった。サンドイッチマンの二人の優しさのある共感力もツッコミもいつも大好き。
今回は全員ガン患者さんたち(がんセンターだから当たり前か)だったのに、皆さん本当に明るくて生きようと頑張っておられたのが印象的。と同時に、家族に支えられ、また家族を心配してる人が多かったのが胸に刺さった。もちろんいい話に感動した面もあったが、ついつい自分がガンだとしてもこうはならないんだろうなと空しくなってしまう気持ちもあって、両方の感情が入り混じってよくわからないまま涙が止まらなかった。
そういう意味で、番組の最後の出演者アベキョウコさん(62)は、本当に今すぐ飛んで行って抱きしめてあげたくなった。ステージ4のすい臓がんが肝臓にも転移しているというキョウコさん。旦那さんはいわゆる”昭和の男”だそうなのだが、告知された時は何も言わなかったし、夫婦で自営業をしているキョウコさんの仕事を誰かに引継ぐこともなく、抗がん剤治療中も仕事をさせ、入院中も仕事の電話をしてくる、奥さんが寝込んでいても奥さんの好物は知らないしどこに売ってるのかもわからない。ほんっと ”昭和の男” って最低だな。いや、”昭和の男”という言葉は大多数の昭和男性に失礼であって、昭和だからじゃない、”自分にしか興味がない”そして”使えるものは親でもつかう”タイプの人の特性の問題なのだ。うちの父もうちの夫もこのタイプだからよくわかる。キョウコさんは笑いながら話していたが、「きっと一人で何度も何度も泣いて泣いて我慢してきたんだろうな」と想像しただけでも胸が締め付けられる思いになった。
キョウコさんはいつ自分が急に動けなくなるかわからないから、旦那さんに迷惑をかけないように、洋服やら食器類やら少しずつ処分しているという。この時だけは「考えたらできなくなっちゃうから無心です」と悟ったようなお顔をされていたのが印象的。悟ったというか、いろいろなものを諦めた末に作りだされた表情にも見えた。どんな気持ちで自分が集めてきた小物をごみ袋に入れているのかと思うと、本当に泣けてくる。
アベキョウコさん、治療がすごくうまくいってお元気になっていますように。
キョウコさんのリクエスト曲は、竹内まりやさんの「いのちの歌」だった。「ありがとう」で終わる沁みる曲である。
生きてゆくことの意味 問いかけるそのたびに
胸をよぎる 愛しい人々のあたたかさ
(中略)
いつかは誰でも この星にさよならを
する時が来るけれど 命は継がれてゆく
生まれてきたこと 育ててもらえたこと
出会ったこと 笑ったこと
そのすべてにありがとう
この命にありがとう
私が自殺念慮の強かったころ、実際に自殺未遂をした時は、生んだ人育てた人関わった人すべてを恨みながら絞り出すように悔しい悔しいと泣きながら死のうとしてた事を覚えている。失敗したけど。
あの瞬間は「ありがとう」なんてこれっぽっちも思わなかったなあ。でもがんサバイバーの方たちがみなさん一様に周囲の方たちに「ありがとう」と感謝を口にされているのを見ると、死ぬまでの時間を有意義に使うことの重要性をものすごく感じる。
アメリカの精神科医であるキューブラー・ロスが『死ぬ瞬間』という著書で、『死を受容するまでの5つの過程』を提唱した。1
- 否認:自分が死ぬということは嘘ではないのかと疑う
- 怒り:なぜ自分が死ななければならないのかという怒りを周囲に向ける
- 取り引き:なんとか死なずにすむように取引をしようと試みる
- 抑うつ:なにもできなくなる
- 受容:最終的に自分が死に行くことを受け入れる
『幸せながん患者』の著者であり1000人以上のがん患者を診てきた森山紀之医師がおっしゃるには、がんの告知からこの”受容”までにかかる期間は約2週間とのこと2。 もちろん長い人も短い人もいるだろうが、頭を整理するにはそれだけ時間がかかるということ。事件や事故や衝動的な自殺で亡くなる人には(いくら走馬灯が流れると言っても)このプロセスは無いのだから、がんサバイバーの『死を受容して周囲への感謝を口にできる』のはある意味幸せな旅立ち方なのかもしれない。
いつも「生きていたくない」「早く死にたい」と思っている私ではあるが、実際に今すぐ死にたいのかと言えば最近はそうでもない。どうせ誰しもいつか死ぬのだし、私のような思考の人間にとってその瞬間は「やっと死ねる」と安堵の瞬間になるだろう。なので先の楽しみを励みにしながら「生きられるだけ生きてみよう」というのが今の心境である。そんな感じなので、できるだけ死ぬまでの時間を有意義にすごして、その過程の末にできれば最期は「やっと死ねる」じゃなくて「ありがとう」と思いながら旅立ちたいものだなあと思った。
- ”死ぬ瞬間”, Wikipedia , https://ja.wikipedia.org/wiki/死ぬ瞬間(最終閲覧日2026/2/11) ↩︎
- “1000人を診た医師が語る「死の受容・5段階」「幸せながん患者・5つの分岐点」”, 講談社「おもしろくて、ためになる」を世界へ, https://news.kodansha.co.jp/books/20170709_b01(最終閲覧日2026/2/11) ↩︎


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