悲劇のヒロイン

続・どんぐりの背比べ

 思ったより風邪は悪化してしまい、夫が「寝てていいよ。」と言ってくれたこともあり、週末はずっと寝ていた。本当に幸せだった。
 思えば私は小さい頃から、風邪をひいて寝こむのが好きだった。学校を休める。好きなテレビを見ていていい。母が大好きなグラタンを作ってくれた。なによりも自分が特別な状態にあるのが心地よかった。でもその状態はあまり長くは続かない。次第に母の機嫌が悪くなり、「私だって具合が悪いのに。」と八つ当たりされるのがオチだった。母は自分がヒロインでいたいタイプだったので、たとえそれが娘であろうと、長いこと主役を奪われるのが嫌だったのだろう。
 その気質は、私も受け継いでいるのだろうか。うつ病になる前も、一生懸命仕事をしてどんどん痩せていく私ってカッコイイと、少し思っていたような気がする。同期の友人に「今年に入ってから5キロも痩せちゃった。」などと自慢げに話していた覚えがある。大変な自分を演じているうちに、気がついたら自分ではどうにもならないところまで体が壊れてしまい、悲劇のヒロインどころではなくなってしまった。
 ここ数日いやというほど寝たら、少し外の空気が吸いたくなった。こんな風に思えるのも、私が健康になってきた証拠である。悲劇のヒロインはもういいかな。脇役でもいいから笑顔でいられる役がいいと思う。

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