続・抜かされる女

エッセイ

 以前から私はよく順番を抜かされると書いてきたが、昨日もまたキレイに抜かされて自分の存在感のなさを思い知った。昨日はデパ地下の総菜屋さんで。レジ打ちをしてくれた店員さんがすごくモタモタしていて、私のお惣菜をショーケースの上に置いたままずっとレジと格闘していた。私の横では別のお客さんが明らかにイライラした様子で立っていて、それに気づいた別の店員さんが「お待たせしました」とテキパキその人のお惣菜を包み、レジ前で格闘しているモタモタ店員さんに「750円現金」などと指示した。するとモタモタ店員さんはやっと処理が終わった私のカードを手に持ったまま、750円のレジ打ちをしたのだ。あっという間に隣のお客さんのお会計は終わり、そのイライラさんは「こちらの方が先なのにね」と私に笑いかけながら、テキパキ店員さんが包んだお惣菜を手に帰って行った。しょんぼりしていた私にようやく気付いたテキパキ店員さん。「あら、まだお渡ししてなかったの?」などとモタモタ店員さんに言いながら、「すいませんね」とようやく私のお惣菜を包んでくれた。
 この話を夫にしたら、「相変わらず影が薄いねぇ」と笑われた。この事例の場合、私のイライラアピールが足りないのだという。確かに私はショーケースに手をかけて指をトントン動かしたり、店員さんをジロジロ睨んだりすることは絶対にしない。どちらかというと目線はそらし一歩下がって、口元にはアルカイックスマイルをたたえてひたすら待つ。それがいけないのだろうか。
 たまに店に来るなり大きなため息をついてバンッと荷物を置いたりする人がいるけど、なんで最初からキレぎみなんだろうと不思議で仕方がない。そういうお客さんなら確かに店員さんも緊張して怒らせないようにテキパキ接客するのかもしれないけれど、ああいう風にはなりたくないんだよなあ。
 という訳で私は常に穏やかでいたいので、これからも態度を変えることはないだろうし、これからも順番を抜かされる運命なのだと思う。そしてそれは自分で選んだのだから、抜かされても文句は言うなってことだ。
 そういえば不思議なことにうちの愛犬。ご近所のワンちゃん達と一緒におやつをもらう時、いつもみんなに順番を抜かされている。一生懸命にオスワリして待っていて、別のワンちゃんに体当たりされてよろめいたりしている。ドン臭いなあと苦笑しながら見ていたのだが、その話を聞いた母が「あなたの小さい頃にそっくりね」と言っていた。なんで似ちゃうのかなあ。

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