人の事なので頭にきた

続々・どんぐりの背比べ

 うちの親って、病気の人に失礼な事ばかり言うから本当に困る。親の持論によれば病気と言われている人の多くは、「本当は健康なくせに勘違いして病院に行って検査なんてするから病名がついて薬を飲まされて薬の副作用でどんどん体調が悪くなってそのせいでポックリいく」のだそうだ。
 自分たちは”病は気から”をモットーに健康に気を使ってきた甲斐もあって、大病もせずに長生きしていることが自慢だしほめてもらいたいのかもしれない。でも病気の人だってよほど不摂生をしてきたならともかく、なりたくてなるわけじゃない人がほとんどだ。薬でなんとか進行を遅らせているけれども、治る見込みがなく苦しんでいる人だってたくさんいる。それを「元気そうだから病気じゃないと思う」「病院に行かなければ薬なんか飲まなくてもすんだのに」「毎日忙しく過ごしてれば治る」「私のほうがよっぽど調子悪いから安心して」なんて病気とは無縁の人にしつこく言われたら、言われ続けたほうもいい加減「何も知らないくせに」とカチンとくるのではないだろうか。自分が病気になった時に自分がどうしようと勝手だが、絶望の淵にありながらも医師を信じて闘病生活を頑張っている人に、それを否定するような考えを押し付けるのはどうなのと思う。
 好意的に解釈すればどうやら親は病気の人やその看病をする人を一生懸命に元気づけようとしているつもりらしいのだけれども、正直かなりズレている。なぜ相手の立場に立って気持ちを思いやることができないのか、なぜ素直にまず一言「心配です」とか「お大事に」とか優しい言葉が言えないのか、我が親ながら甚だ疑問なのだ。(こんな事を書くとまた「笑えない」の時みたいに、「そう返すのが普通という考えは傲慢過ぎ」とか言う人がいるかもしれないが、人が不安に苦しんでいる時に変な言葉しか出てこない人は、世間ではどうか知らないけど私の中では”ちょっと普通ではない人”に選別されるってだけである。)
 私は病気になって病院に通うたびに親からそんな事を言われ続けてきて、うつ病が酷い時なんかは病に追い打ちをかけられるようでそれはそれは堪えたけれども、自分の事だからまだ黙っていられた。けれども親は最近人さまの病気についてもそんな事を盛んに言うようになってきて、いつか誰かに失礼な事を言ってトラブルになるのではないかとヒヤヒヤしてしまっている。今日も電話で親戚の深刻な難病の話をしていた時に、「病院なんか連れてっちゃってバカだ」とか「ビタミンEとれば治るって教えてあげよう」などと笑い飛ばしていたから頭に来て、「ちゃんと診断が出てるんだし病気っていうのはそういうもんじゃないわよ」と初めて言い返してみたが、全く聞く耳持たずというか「診断名なんて医者が勝手につけただけでしょ」と逆に言い返され、しばらく言い争ってしまった。この点はよく夫からもおかしいと言われるのだが、自分の事だと押し黙って我慢するくせに人の事になると頭にきて正義感振りかざしちゃう私。忘れもしないこれが人生二度目の親との言い争いだったが、一度目ももちろん人の事だった。話はそれたが、今日の電話でもう今さら親の考え方を変えるのは無理だと悟り、今後もし何か他人さまへの失言に気づいたら私がフォローして回るしかないという結論に至ったわけだ。
 ちなみに、先日私が子宮筋腫の手術をした日、内心不安な手術前の私に親がくれた励ましの言葉は、「あなたがする手術は本当はしなくてもいい手術なんだからね」だった。最初は意味がわからなかったのだが、要はたいしたことない手術だから安心しろってことだったのだろう。前述の「本当は健康なくせに勘違いして病院に行って・・・」そのものの考え方で相変わらずブレないなあと苦笑しつつ、私が好き好んで不要な手術をしているような雰囲気にモヤモヤした。

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