一昨日のクローズアップ現代で、Facebook社の女性COOであるシェリル・サンドバーグさんのインタビューを見た。シェリルさんは著書「LEAN IN」で、リーダーを目指そうとする女性には一歩踏み出して欲しいと強く訴えている。女性の多くが職場から去り、昇進から外れていくのはなぜか。注目したのは、社会の壁に阻まれ自ら身を引いてしまう女性の「内なる障壁」。男性たちもそうした女性たちの傾向にほとんど気づいていないことが問題だと指摘している。
より平等な世界を真剣に目指すなら、女性が手を挙げつづけない傾向があることを、まず認識しなければならない。より多くの組織や個人がこうした傾向に気づき、女性を励まし背中を押すとともに、女性自身も手を挙げつづけることを学ぶ必要がある。手を下ろしてしまったら、どれほど注意深い上司でも、もう気づく事はできない。
本当にその通りだなあと、私も昔バリバリ働いていた頃のことを思い出しながら共感した。男女平等の先進国と思われているアメリカも、日本とさほど変わらない状況であることにも驚いた。
シェリルさんは本を書いた今でさえ「仕事も中途半端、家庭も中途半端」と落ち込み、罪悪感を感じながら働いているという。その気持ちもわかるなあと思いながらここまでは興味深くインタビューを聞いていた私だったが、聖パトリックの日の失敗エピソードを笑いながら話す彼女を見て、なぜだか急に違和感を感じてしまった。緑色の洋服を着せるのが慣わしのこの日、息子にうっかり青色の服を着せて登校させてしまったシェリルさん。そんな彼女に夫は言ったそうだ。「息子は大事なことを学んだんだ。みんなと同じでなくていいってことをね。」そして息子からは「ボクは青が好き。」と言ってもらえたとのこと。なんだか美談になっていたが、私は笑えなかった。
聖パトリックの日に緑色の洋服を身に着けていない子供はつねられると聞く。日本だったらイジメの対象になってしまうところだ。息子が1日どんなに肩身の狭い思いをしたかと思うと、しかも母に気を使って強がりを言っている姿を思い浮かべたら、笑い事ではすまないと思ってしまった。テレビの中で「だから心配しすぎず、完璧でない自分を許せばいいんです。」と半ばドヤ顔で笑うシェリルさんに「そこはちゃんと反省しようよ。」と思わずツッコミを入れてしまった。
もちろん一般女性を安心させるためにわざと失敗談を面白おかしく話しているのだろう。本当のシェリルさんは相当優秀な方だし、仕事も家庭もしっかりこなされているのだと察する。でもこの話を真に受けて、多くの女性が最初から適当な感じになってしまうことを憂えた。「完璧じゃなくてもやる事が大事なんです。」とシェリルさんは言うが、私はどうしてもやるからにはできるだけ完璧を目指すべきと思ってしまう。たぶんシェリルさんの言うような考え方でないとこれからの社会ではやっていけないし、私のような人間はむしろ老害なのだと思う。「女の敵は女」とよく言ったものだ。私のような人間がいると、いつまでたっても女性のさらなる社会進出は望めないということを言っているのだろう。実際、自分に厳しすぎる私は精神的におかしくなってしまったわけだし。
うつ病を患ってから自分を甘やかす訓練を続けてきた私だったが、根底にある「自分に厳しく他人にも厳しく」という考え方は何も変わっていないことを思い知らされて愕然としたのも確かだ。たとえ元気になってももう社会で働くべきではないと自覚しつつも、小さい頃からずっと完璧であろうと頑張ってきたのは何だったのかなと悲しくなった。女性の社会進出という点では共感しつつも、最後は複雑な気持ちになる番組だった。
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一歩前へ踏み出そう~シェリル・サンドバーグさんのメッセージ~(クローズアップ現代)
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