犬を触る時は一声かけて

続々・どんぐりの背比べ

 うちの犬は「幼児」が苦手のようで、遠くに小さい子供の姿を見つけるだけで逃げ腰になってしまうほど。あまり急に近づかれると吠えてしまうこともあるので、なるべくトラブルにならないように最初から近づけないようには気をつけてはいるのだが、小さい子供の動きは早くてそうも行かない時もある。
 とは言っても普通は小さい子供には母親がぴったり寄り添っていて、子供が勝手に犬に近寄らないように手を引いているので安心だ。動物好きな親子の場合は「触らせてもらってもいいですか?」などと聞いてもらえるので、「下からゆっくり手を出していただければ大丈夫です」と言えるし、犬が怯えている様子であれば「今ちょっと怖がってるみたいなので、吠えたり噛んだりしてしまうといけないからごめんなさい」とお断りすることもできる。そういう場合はたいてい「いえいえこちらこそすみません」などと言ってくださるので、お互い嫌な感じではないはず。子供の安全のためにも重要なことで、これが普通のコミュニケーションだと思っていたのだが、最近はそうでもない人がたまにいるのが怖い。
 先日もある店の前のベンチで犬を抱いて夫を待っていたら、少し離れた場所から「ほら、たーくん(仮名)!犬だよ犬!かわいいねー!」と私たちを指差しながら子供の手を引いて近づいてきた母親がいた。知らない人にガンガン指を差されて「え?」と思ったが、次の瞬間子供がすごい勢いで走ってきて犬に触ろうとするではないか。母親も「ほら触ってごらん」とか言ってる。うちの犬はビックリして逃げようと私の肩まで這い上がってきた。それでも子供が犬の体に触ったので、ついに犬は吠えてしまった。私は犬をかばいながら子供に「ごめんね」と言ったが子供は手を引っ込めようとしない。そこで母親に「ちょっと怖いみたいで本当にすみません」とペコペコしながら言ったら、返ってきた言葉は「いーえ」と一言だけ。それから母親は子供に「怖いんだって」と言いながら去っていった。去りながらもこちらに聞こえるほどの大きな声で「あの犬たーくんが怖いんだってさ」と言い続けていたので、私が悪いことをしたのかのような気分になってしまった。犬はしばらく震えていたし散々だった。
 ああいう人って例えば知らない人がかわいいバッグを持っていたら、「かわいいー」とか言いながら勝手にベタベタ触るのだろうか。犬はバッグと違って感情があるし、それよりずっと質が悪いと思う。少し前にもやはり同じような事があったのだが、私が「すみません」と言ったところ母親に「触っちゃダメなんですか?」とニコリともしない顔で言われた。他人の犬を勝手に触ってはいけませんという法律がある訳でもないので強くは言えないが、なんと説明すればいいのやら。もし子供が急に手を出して犬が噛んだとしても一方的に犬が悪いことになるのかと思うと、犬オーナーとしては危険を未然に防がなければいけない。そして何よりこういう事が重なって、うちの犬はどんどん小さな子供が苦手になってしまっているのが悲しい。

コメント

テキストのコピーはできません。