ベランダの花びら

エッセイ

 私は掃除がロクにできないこともあって、最初からベランダに何も置いていない。そもそも元気に働いていた時もいただいた観葉植物は全部枯らしてしまっていたぐらいなので、ガーデニングの才能は皆無なのだと思っている。両親ともに庭いじりが趣味なのだが、そういうところは全く似なかったようで、植物に何の興味もわかないのが本音だ。
 何も置かないからベランダがいつもキレイなのかと言うと、残念ながらそうでもない。マンションの中層階であるにも関わらず、排水溝は次第に土で埋まっていくし、どこからともなく飛んできた枯葉や花びらが常にベランダのどこかしらに落ちている。特に花びらは要注意である。うっかり放置して雨やエアコンの排水にでも濡れてしまうと、ベランダの防水塗装面にベッタリへばりついて取れなくなる。洗濯物を干すついでにベランダに落ちた枯葉や花びらを拾うたびに、「こういうのが嫌だからガーデニングしていないのに、なんで私が掃除しなきゃいけないの」と正直苦々しく思う。
 先週は白い花が形のまま毎日飛来してきて、花びらを下にしてクーラーの排水にいくつも浸かっていた。どんよりした気分で拾いながら、でも文句は言えないよなあと落ち込んだ。こういうのってお互いさまだし、私はガーデニングこそしていないけれども何か他で迷惑をかけているかもしれないし、そう思って我慢するしかなかった。
 ところがここ数日はその白い花もパタリと飛んでこなくなった。花は散り終わったのだろうか。ホッとして嬉しいけれど、毎日の来客がなくなってほんのちょっと寂しいような気がしないでもない。花に罪はないからね。

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