今日放送の報道特集を見た。
先週、兵庫県・斎藤元彦知事のパワハラ疑惑を追及していた元県議の竹内英明さんがなくなった。自殺とみられている。SNS上に拡散された竹内元県議への誹謗中傷、その真偽を検証する特集だ。
辞職後も竹内さんと連絡と取り続けていたという同僚の迎山志保県議が見せてくださった、竹内さんのLINE画面。明らかにの立花孝志氏(NHKから国民を守る党・党首)からの攻撃に怯えていた。
(妻が)立花の事務所襲来エックスなどを見てしまっていて怖いと言ってます。
またうちに攻撃とかあったら耐えられません。
昨年12月7日のLINEでは、竹内さん自身がひどい鬱状態に陥っていた様子が痛々しかった。
ごめん。薬の助け借りてなんとか眠ってる。心配かけてごめん。いまから寝る。睡眠薬があるから眠れる。ごめん。
たった50文字足らずの一つの送信に、3回もごめんがあるなんて。どんなに自分を責めて責めて辛かっただろうかと思うとやりきれない。迎山県議は竹内さんの言葉をつぶやいた。
「自分は本当に真摯に政治や県民に向き合ってきたつもりだったけれども、これまでの自分の人生もなんだったんだろうかなと思うし、こういうことがまかり通っていく社会っていうものにもほんとに希望が持たれへんな」って
そして1月18日竹内さんは亡くなった。自殺とみられている。
私も今、とても同じことを思っている。
真面目に社会のルールやモラルを守り、お互いに思いやりながら寄り添いあって助け合って生きている弱い集団にとって、”こういうことがまかり通っていく社会”は恐ろしくてしかたがない。誰かが助けてくれるだろうと思って黙っていると攻撃はどんどんエスカレートし、見かねて助けようとする人がいるとその人がまた次の攻撃のターゲットにされていく。なぜこんな社会になってしまったのだろう。どうしてルールやモラルを守らない人たちが罰せられることもなく、力を持ってしまうのか。怖いし、絶望するし、生きていたくなくなってくる。
竹内さんを酷い鬱状態にしたといってよい張本人の立花孝志氏は、報道特集の取材にこう嘯(うそぶ)く。
僕は竹内さんに対しては、そんななんか、僕自身は批判や特に誹謗中傷をしたっていう記憶はないんですよ。
これぐらいのことで自ら命を絶つような人が、政治家しちゃいかんと思います。
そしてなおも、亡くなった竹内さんに対する主張を続けた。
でっちあげというか、僕は疑惑といったつもりなんですけど。
その疑惑に対してちゃんと弁明されたらよかったでしょ?っていってるわけですよ。
疑惑とでっちあげとなるとちょっと印象が違いますよね。
僕でっちあげなんていってませんよね、疑惑ですよね。
ところが立花氏のYouTube動画を見ると、立花氏はホワイトボードに”デッチあげしてた”と書き、ハッキリと次のように発言している。
とにかく竹内県議がかなりデッチあげをしていたことは多くの人わかってらっしゃると思うので
動画を公開したわずか4日後にコロっと発言が変わるような人物である。なぜ「N信」と呼ばれる”立花信者”たちは、このような人物の言葉をやすやすと信じてしまうのだろうか。
なおも報道特集が”でっちあげ”について問いただすと、立花氏はこのように主張した。
僕はそういう疑惑があるということを言っているだけじゃないですか。
そんな事に対して、僕は別に興味はないから言ってない。
そんなに強く興味がないから。
疑惑であって。
興味がないと言っているのは、間違わないで欲しいのは、その疑惑の真相を追求するほどの興味がないっていう意味です。
不確かな情報であっても自分が”疑惑”と思えばそれを発信することは問題ないということか。”疑惑”があったほうが面白いしゴシップが好きな層にウケて動画再生数が稼げるしね。元宮﨑県知事の東国原英夫氏もインタビューで同じ趣旨のことを言っていたが、反吐が出るとはこのことだ。
ちなみに東京大学工学系研究科の鳥海不二夫教授が『竹内さんに関するXの投稿はどのように変化したのか』を分析したどころ、次のような結果だったという。
- 1月19日昼頃に竹内さんが自殺したとみられることが報道されると、その動機を「逮捕を恐れて死んだ」などとする投稿が一気に拡散された ⇒ 約4万件
- しかしその日の夕方、新聞三紙が県警関係者への取材をもとに「そうした事実はない」と報道すると、竹内さんを擁護する投稿が批判の4倍拡散された ⇒ 約16万件
つまり、メディアによるファクトチェックが誹謗中傷を抑えられたということだ。メディアの責任は大きい。
鳥海教授は言う。
大手メディアを含めきちんとしたところが、間違った情報には「間違っているよ」と、「正しい情報はこうですよ」と、信頼を置けるような形で情報発信をするということは、一つ大きなポイントかなというふうには思います。
私は大手メディアいわゆるマスコミは嫌いである。マスコミは偏向報道もするし、やたら左翼ぶって国民の不利益になるような印象操作をするから嫌い。
でも(そもそも立花氏が言い出した言葉だと思うが)マスコミを『オールドメディア』と揶揄する人はもっと嫌い、大嫌いである。マスコミは(編集方法は置いといて)きちんと取材をして裏取りもする。放送法もあるしBPOもあるし、スポンサーや視聴者の監視の目が届く「法人」である。従ってマスコミと、無法地帯で何のしばりもない「真相を追求する興味もない」人たちが出してくる情報を比較しようなんてナンセンス。
別に『ニューメディア』を見て情報を得るのは構わないが、ゴシップ情報を鵜吞みにして自分で”一次情報(自分が直接体験をすることで得た情報、もしくは自ら行った調査や実験で得た情報)”を調べる努力を放棄するのは危険すぎると思う。その”一次情報”を最も信頼できる方法で私たちに提供している媒体は、悲しいかなマスコミなのである。
さらに鳥海教授の分析によれば、『竹内さんに関するXの投稿』について興味深い結果が得られた。
- 批判的な投稿が1年間で11万回拡散された
- 全ポスト数に対してその50%ぐらいは13個のアカウントから発信された
- 2番目に多かったアカウントは立花氏のアカウント
今の情報空間っていうのはこういうものなんだってことをきちんと理解した上で情報を摂取していくということを考えないと、同じような事がまた起きるんではないかなと思います。
私たちは、鳥海教授の指摘を肝に銘じなければいけない。
SNSのエコーチェンバーに扇動されて、1次情報を調べずに拡散する人たちは本当に罪深いと自覚するべき。それにしても立花氏を超える1番目のアカウントは誰なんだと思う。公表してもよかったかと思うけれど。
最後に、報道特集の日下部正樹キャスターは特集を次の言葉で結んだ。
ネット上には「テレビは、自分は安全圏に身を置いてさんざん人を追い詰めてきたじゃないか」「立花氏のやっていることと、テレビの斎藤知事バッシングとどこが違う」という声が少なくないんですよね。
私たち、こうした声100%否定できるでしょうか。私たちは、相手にするとめんどくさいからと言って立花氏の発言にきちんと向き合ってきませんでした。
結果的に、立花的な言動が野放し状態になって、一部社会的に受け入れられるような空気を作ってしまった訳ですよね。批判や中傷を恐れて人々が口を閉ざす社会にしては絶対なりません。
私たちと立花氏の間に線をひくためにはですね、私たちは愚直に真実を追い続け、たとえ少数派になろうとも、事実に基づきダメなものはダメなんだと声をあげ続けなければなりません。
今こそ大手メディアに期待している。
頑張れ!大手メディア!
負けるな!大手メディア!
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