変わってしまった自分の考え方にゾッとする

エッセイ

先日父や姉と話をしていたとき、2年前に亡くなった母の話が出てきた。

亡き母は怖がりの性格もあって、元々病院に行くのが嫌いな人だった。人間ドックも一回も受けたことがなかった。次第にテレビや週刊誌に毒されて『病気はこうして作られる』とか『絶対に飲んではいけない薬』などという本を読んでは「病院なんか行ったらデタラメな病名つけられて薬漬け。医者と製薬会社が儲かるだけだからね!」と事あるごとに言っていた。実際病気で苦しんでいる私や私の義母に対して「お医者さんなんか行くからよ!私を見なさい。私なんてもっと具合悪いのに医者に行ってないけど元気なんだから!」などと笑っていた。結果、母は気づいた時には末期の悪性リンパ腫で、倒れてから1か月ほどで他界してしまったのだけど。

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そんな亡き母について姉が「あまりにも早く逝きすぎて整理がつかない。交通事故に合ったようなもんだから」と言えば、父は「交通事故以上だ。コロナが怖くて病院に行けなかったのだからコロナに殺されたようなもの」と悔やむ。姉はそんな父に「パパが病院に連れて行かなかったからママが死んだの!パパのせいよ!」となじって泣く。プチ修羅場だった。

私はそのやり取りを黙って聞きながら「母は病院で治療をうけるのが嫌で病院に行かないと言う選択を”自分で”してきたのだから、これが本望だったのだと思うけど。」と考えた。頑張って通院していた私や私の義母を笑った事はどうしても忘れられないし、簡単に言えば「自己選択」「自己責任」もっと言えば「自業自得」という言葉が頭の中をぐるぐる回っていた。

おずおずと「でも辛くて長い治療はしたくなかったみたいだからこれでよかったんじゃ・・・」と言ってみたら、姉に「ママは最後は早く病院に行ってればよかったって後悔してた。もっと生きたがってた!」と怒られてしまった。仕方なくそれ以上発言するのはやめて、ワーワー泣いて父を責める姉や押し黙って涙をこらえている父をしばらく見ていたのだが、聞いているうちに今度はだんだん私がおかしいのかなと思えてきた。私は夫がアレなので逞しく一人で生きるようになりすぎて、ついには夫と同じような冷酷な人格になってしまっていたのではないだろうか。ゾッとした。

非アスペルガー症候群の家族は、常に一緒に生活するアスペルガー症候群が表すペルソナ(外的人格)を、少しずつ長い時間をかけて映し出すようになる。孤立し、誰からも正当性を認められない。

カサンドラ症候群 - Wikipedia

家族の個々人の境界が全くない私の実家。家族の事は家族の責任と思う姉や父。他方、家族は行政上の”世帯”を同一にする個人でしかないバラバラな夫の家族。私が床で倒れていても無視して横を通り過ぎる夫。どっちが普通なのかおかしいのかわからない。いや普通ってなんだ。家族ってなんだ。本当にわからなくなってきた。相手によって価値観を180°使い分けないとやってられないのは、結構しんどい。

コメント

  1. あおい より:

    ぐりえさん、こんばんは。
    この毎日の気温と気圧の乱高下は何なんでしょうね。老体に堪えますわ(笑)
    コロナ禍の前くらいから目眩持ちになってしまい、最近はひとりで電車に乗るのが怖くなりました。家族が誰か一緒なら平気なんですが…
    MRIもCTも撮ったし聴力や鼓膜の検査もしたけど、何も出ませんでした。
    人混みに行くと、首から上だけ凄い汗をかいたり、10年遅れて来た更年期?とか思ってます。この冬はダウンなんて一度も着ませんでした。

    お母さまのことを書かれた記事を拝読してふと、今日は母の命日だったのを思い出し、これを書いています。
    早くも14年経ってしまいました。よく娘(東京で仕事をしていてたまに帰省します)と、おばあちゃんの思い出を話したりするのですが、母と私と娘は串団子みたいに仲が良くて、いろいろな所に出かけたり、私が言うと角が立つことも母に言って貰うと娘が素直に聞いてくれたりして、子育ての間、母が近くに居てくれたことに感謝しています。
    亡くなった人のことを残った者が話すのは、どんな形であっても供養になるそうですよ。
    ぐりえさんも、今後5年、10年と経つ内に心境も変わって行かれるかと思いますが、時間に身を任せて自然体でいることが、一番ストレスにならないかなと思います。

    春近し。今日歩いて買い物に行ったら(あ、1日一万歩歩くと、膝を痛めるそうです!)桜の木に固い蕾がついていました。
    早く気温が安定しますように…

    • どんぐりえ どんぐりえ より:

      あおいさん、こんばんは。
      本当に気候が不安定で我々には堪えますよねぇ(泣)
      お母さまともお嬢様とも仲が良くて羨ましいです。未だに母の事を想うと胸がドキドキしたりギューッとなったりしますが、あおいさんの「どんな形であっても供養」という有難いお言葉を信じて折に触れて思い出していきたいと思います。
      リウマチになってからなかなか運動できていませんが、私もなるべく散歩はするようにしています!今年は梅をたくさん見ましたよ~
      もう桜の蕾があるのですね。早く穏やかな春になるといいですね(ー人ー)

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