愛犬の治療のためならいくらでも頑張れる話

エッセイ

 愛犬のこころが、急性肝機能障害(おそらく胆泥症が原因)でしばらく入院した。

 こころはもともと食に対する欲求があまりない子で、ここ1~2年は1日1食ほどしか食べてくれなくなっていた。だが3日ほとんど食べず胃液を嘔吐してしまったのでさすがにおかしいと病院に連れて行ったところ、血液検査で肝臓の数値とCRPとビリルビン(黄疸)が高かったのだ。

 エコーでは胆管の出口が膨らんでいるのと、胆嚢の内壁が腫れているのが診てとれた。胆管閉塞はしていないものの、おそらく胆管の出口に胆泥が滞って流れが非常に悪くなっているというお話だった。点滴と強肝剤や抗生剤の投与と最終的には「スパカール」という胆管の筋肉を弛緩させるお薬を投与してもらったところ、詰まりが改善されたようだ。ビリルビンは基準値に戻り肝臓の数値とCRPも下がってきたので、3泊4日で退院できた。

 それでもまだ肝臓の数値もCRPも高いので、退院してからは1日2回朝と夕、点滴がわりの皮下注射を投与しに通院していた。しかし私、先日書いたが「口腔カンジダ」とそれに付随する胃腸炎が全く治っておらず、普通の食事をすると猛烈な胃痛や下痢が襲ってきてしまうので、未だにお粥生活である。もともとリウマチで怠い身体がさらに怠くなっている。こころのためならいくらでも動けると思い頑張って1日2回通院していたのだが、実は通院4日目ともなるとダウン寸前だった。

 そんな折、先生がなんと「お家で皮下注射できます?1日2回通院していただくのも大変でしょう」と助け舟。思わず「できます!」と即答してしまった。こころも病院に来るたびにブルブル震えてたし、私もこころも家で治療できるならこんなにいいことはないと思ったのだ。
 先生に注射の指導をしていただいて「ここに刺してみてください」と言われるままにやってみたら意外と簡単にできたので、その日の夜から自宅での皮下注射をすべく点滴液と注射針と翼状針を持ち帰った。 

 ところがいざ家でやってみようとすると、それはそれは大変だった。我が子に針を刺すことの、なんと辛いことか!
 まず夫にこころを保定してもらってこころの背中の肉をつまもうとするのだが、こころは痩せていて脂肪がほとんどないので先生のようにつまめない。夫の保定の場所と私のつまむ場所を二人で四苦八苦しながら探った挙句、どうにかこうにかやっと背中をつまめて針を刺した。だがその瞬間、こころが大きな声で「ケケーッ」と泣き叫んだのでビックリして針が抜けてしまったと同時に、針を刺したところから血が少し出てきた。病院でこころが泣くことなんてなかったし血も出た事なかったから、私はめちゃめちゃ動揺してしまった。
 それから刺そうとすると「ケケーッ」と泣きながらジタバタするのを数回繰り返し、かわいそうでかわいそうで私は「どうしようどうしよう」と半べそになったし、夫などは「もうやめよう。無理だよ。明日病院でやってもらおう。」と諦める始末。

 でも変なところで度胸のある私。しかも夫にそんなこと言われたらプライドが許さない。「いや、絶対に刺す!絶対に!次の一回で刺さないとこころがかわいそうだ。こころのため!」と宣言して、なんとか刺しきったのであった・・・・(完)

 いや、終わりません。このあと私、ショックで放心状態になってしまってしばらく立てなかったのだ。なんというか、我が子に痛い思いをさせて泣かれるというのは心が削られすぎてボロボロ。「明日からどうしよう」って真剣に悩んだ。
 そんな時こそTwitter(現X)ですよ!私のフォロワーさんには医療従事者が何人か、仲の良いナースさんも2人いる。わんちゃん猫ちゃんフェレちゃんに自宅で注射をしていた方々もいる。そんな皆さん本当に優しくて、私に色々とアドバイスをくださった。皆さんの話をまとめると、どうやら「リラックスして」「堂々と」「余裕をもって」「医者になりきって」やるのがいいらしい。なんなら白衣でコスプレするという強者もいた。そして結局は「慣れ」らしい。そうだよね。動揺したり緊張したり悩んだりしながら恐る恐るやってたら、全部こころに伝わっちゃうからこころも不安になるよね。
 あと出血については、毛細血管があるから多少は出血することもあるそうで、血管の中に針が入ってないかはシリンジを少し引いて逆流するかどうかでわかるという豆知識も聞いた。そういう話を聞くとちょっと安心する。

 そうと決まったら、イメージトレーニングである。翌朝は「私は医者だ。注射が得意だ。」と何度も唱えてスーパードクターになりきってから、こころに「はい、ちょっとチクっとするよ~」と語りかけながら刺したら・・・一発で成功した🙌 Twitter(現X)の偉大なる友人たちに感謝感謝である✨

 そんなこんなで自宅の皮下注射は3日目。「ケケーッ」と泣かれることもあるがなんとか毎回刺しきって、幸いこころの肝臓の数値はゆっくりゆっくり下がりつつある。あとは再発しないことを祈るのみ。
 ただ先生は、胆泥がまたすぐ詰まるかもしれないから胆嚢摘出手術をしたほうがいいかもしれないとおっしゃる。でもこころは次の8月で15歳。僧帽弁閉鎖不全症グレードB1~B2。身体も小さいし細い。手術は避けたいなあ。
 さしあたっては食生活でなんとか予防したいと思い、手作り食の本と肝臓の悪い子用のカリカリを注文してしまった。

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