夜中の掃除機

続々・どんぐりの背比べ

 前々から書いている上の階の叫ぶ人。相変わらず朝から深夜まで叫び声がしばしば聞こえてくるので私もだいぶ慣れてきたが、最近それに加えて夜11時頃に掃除機の音が聞こえてくるようになった。掃除機ではないかもしれないし同じ人だという確証もないが、とにかく上の方から超音波のような「ウィーン」という高い音が夜な夜な聞こえてくるので、そんな事をする人はきっと同じ人なのだろうと勝手に思いこんでいる。
 最初は何かをこぼしたのかなと思った。そんな緊急事態もあるだろう。けれどもそれが毎晩ともなると、これは日課になっているのだと理解した。好きなことを好きなときに好きなようにできるその人が羨ましい。それだけ他人の目を気にせず自由にふるまっていたら、さぞかし生きていて楽だろうと思った。
 でも待てよ?ではなぜ毎日叫ぶのか。絶叫するのか。もしかしたらものすごくイライラすることがあるのかもしれない。私には想像できない苦しみがあるのかもしれない。イライラのあまり気を落ち着けようと、掃除をせざるを得ないのかもしれない。そう思ったら一概に非難ばかりしていられない気がしてきた。しかも毎日掃除をするなんて、週1回しかしない私に比べて主婦としてエライ。主婦の風上にもおけない私には、掃除機の音に対して文句を言う資格なんてないのだ。
 こんな感じで毎晩「ウィーン」の音を聞くたびに、ぐるぐると考えこんでしまう私。他人の行動をなんとか理解しなければと、その意味をあれこれ探ってしまう。早寝早起きがモットーの夫はこの時間にはすやすや寝ているので、話し相手にもなってくれない。たぶん夫は他人の行動など全く気にしないタイプなので、話したところで「別にいいじゃん」「気にし過ぎ」と一笑に付されるだろう。
 別に上の階に怒鳴り込もうとか管理人さんに相談しようとか、そういう気は毛頭ない。眠れないのはそのせいだけじゃないし、最近ひどく体調が崩れたという訳でもない。騒音はお互いさまだから慣れればいいだけ。ただ夫と話していると、私の方がむしろ気にし過ぎのおかしな人間なのだと思って悩んでしまうのだ。気にし過ぎないための理由付けをあれこれ考えなければならない。たぶん誰かに「非常識な人がいるんだねぇ。」と共感して笑ってもらえればすむだけの話なのに。マンションに知り合いもいないし、こういうことを気軽に話せる友達もいないので、ここに書いている次第である。

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