人間ウォッチング

うつ病

 前回の記事を書いていて思い出したのだが、そう言えば私の大学時代の趣味は「人間ウォッチング」だった。授業の合間にはよく駅前の喫茶店に入り、ガラス張りの窓から駅前を行き交う人々を眺めて時間をつぶしていた。同じく観察好きの友人と「あの人はきっと~な人だよ」などと好き勝手なことを言うのが、本当に楽しかった。
 親の顔色を見て育ってきた影響があるのだろうか。私は小さい頃から人の心を深読みする癖がついていて、それがまたわりと当たっていた。小中学生の頃は「超能力がある」と言われたこともあったし、高校生の頃はよく「占って」などと言われていた。大学生になってからは私の「人間ウォッチング」が好評で、構内のベンチに座って通り過ぎる人の”実況中継”などして遊んでいたっけ。その頃付き合っていた彼氏からは、「ぐりえちゃんといると自分の気持ちを言葉にする前にわかってもらえて楽だけど、それだと自分が成長できない」とか言われてフラレた。
 他人の行動が想像できて、楽しんでいるうちはまだ良かった。それまで私が育ってきた環境も、似たような人たちが集まる温室だったのかもしれない。社会人になって外に出るようになると、私が年を取ったからなのか社会が様変わりしたからなのかわからないが、次第に私の理解を超える人たちが出現しだした。なぜこの人はこんなおかしな行動をするのか。なにか理由があるはず。でもそれがさっぱりわからない。そんな事が続くと、私の心はパニックになった。そうこうするうちに人の心を深読みする癖が悪い方に出てしまい、「私がおかしいんだ」「私は怒られている」「私は嫌われている」と思うようになって、結果的にうつ病を発症。
 人の心を読もうとするのはロクなもんじゃないと今ではわかる。「人間ウォッチング」が趣味の人は今すぐやめてほしいと真剣に忠告したい。人の事を気にしない人は本当に強い。人が何をしていようが人からどう思われようが、自分さえ幸せならそれでいいじゃないかと思える人はさぞかし楽しい人生だろうと思う。今の私に必要なのはスルースキル。たとえば電車内でフルメイクをしている人を見ても人混みの中でタバコを吸っている人を見ても、その人の心理や生い立ちを探ったりせず何とも思わないぐらいの強い心がほしい。

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