間違い電話

続・どんぐりの背比べ

 父が携帯電話を新しいスマートフォンにした。そのせいかどうかはわからないが、最近たまに父から無言電話がかかってくる。いざという時のために登録してあるワンタッチの電話帳か何かを誤って押してしまうようだ。
 最初に父からかかってきた時は「こんな時間になんだろう?」とものすごくドキッとした。悪いことでもあったのかと思った。「もしもし?」と出ても父は何も言わない。しかしよくよく耳をすませば、遠くの方から父と母の話す声がする。なんだ間違い電話かと思いつつしばらく様子を伺っていたら、かすかに母の笑い声がした。よかった、母は機嫌がいいらしい。私はホッとして電話を切った。
 それからもたまに父から電話はかかってくるが、一度も本人が出た事はない。遠くの方から聞こえる両親の元気そうな声を確認して、電話を切るの繰り返し。でもこんな間違い電話ならいいかなと思う。健康だという便りに他ならないから。

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