クレーム

日記

 春頃だっただろうか、私が買い物に行くときに車で通る交差点の信号が変わった。車の信号がすべて赤になったときに歩行者信号が一斉に青になる、いわゆる歩車分離式になったのだ。正確に言うと完全な歩車分離式ではなく、なぜか車が青の時も一部の歩行者信号は青のままだ。とにかく歩行者優遇の信号パターン。駅前の人が多い交差点ならともかく、なぜこんなところがと思った。
 それからというもの、その交差点がひどく渋滞するようになった。ほんの数十秒青信号が短くなっただけで、こんなにも渋滞するのかとビックリするほどだった。私は家に帰るのにそこを右折しなければならず、その右折渋滞が特にひどかった。今までは1回の信号で曲がれていたのに5~6回待たなければならなくなり、赤信号に変わってからやっと2~3台が曲がっている状態だった。その渋滞の中には路線バスもいたし、これはみんな迷惑しているなあと通るたびにイライラした。
 これだけひどい状態なら誰かが気がついて、そのうちまた元に戻るだろうと思っていたのだが、夏になっても信号はずっと同じままで渋滞は解消されない。インターネット上のご近所掲示板を見ると同じ愚痴をこぼしている人もチラホラいたので、私だけじゃなかったんだと納得。その掲示板で県警のホームページに「交通信号機意見箱」があることを教わったので、意を決して渋滞がひどい旨をメールで送ったところ、しばらくして県警から電話が来た。
 警察の方が言うことをまとめると、交差点は小学校に近く保護者からかねてより危険だとの苦情が来ていたので歩車分離式に変更したとのこと。信号を変えたばかりの春頃は渋滞がひどいとのクレームも来ていたが、信号パターンを微調整して最近はほとんどクレームも来なくなったから、もうこのままでいいと思っているとのこと。「危険だというのだったら車が青の時に一部の歩行者信号が同時に青になっているのはおかしいのでは?」と聞くと、「あそこは曲がってくる車の量がそれほど多くないので、とにかく早く歩行者を通すために青にしています。」と論理的におかしな回答。
 結局、私は根っからのクレーマーではないので黙って「はぁはぁ」と話を聞いて電話は終わり、最後には警察の方に「あなたのように話のわかる方ばかりだとこちらもありがたいですよ。」とまで言われた。話を聞いていると、要は苦情の数と強さで警察が動くか動かないかが決まっているような感じだった。そこの交差点で大きな事故があったなんて聞いたことないし、小学生が通るのなんて登下校だけの時間帯だけだし先生方やボランティアも立っているのに、それでもなお信号機を変えさせて大渋滞を発生させるほどのパワーがあるなんてどれだけうるさいモンスター保護者だったんだろう。たぶん触れちゃいけない人だと察した。
 警察は「もしまだ困るようでしたら、またお知らせください。」と言っていたが、こういう事で何度もギャーギャー言うのは品がないし恥ずかしいし労力も使うのでもう言わない。「小学生ガー」とか言われちゃうと文句を言いづらいのもある。たぶん多くの人たちはおかしいと思っても直接はクレームを入れないで我慢していると思うし、春頃クレームを入れていたという他の人たちももうあきらめて黙っているのだろう。現に渋滞は全く緩和されていないのだから。本当はこういうサイレントマジョリティ層がちゃんと発言しないと”言った者勝ち”の風潮がどんどん進んでしまう危機感を感じるが、かと言って自分の身を削ってまで頑張ろうとも思えず、だったら我慢して静かに暮らした方が楽だと思ってしまう。

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