貧血がすすんできたので原因や対処法を調べてみた

健康

 前回の関節リウマチの診察日、いつもと同じように血液検査の結果を受け取った。リンヴォックがよく効いているようで炎症マーカーCRPは0.0だったのだが、相変わらずその他の項目に”L”と”H”がたくさんあった。

 中でも私が気になったのは貧血に関する項目である。ここのところの血液検査でじわじわとヘモグロビン値が減っている気がしたのだが、それについて色々と調べてみたのでメモがてらご報告。

 長くなってしまったので結論だけまとめると、次のようなことがわかった。

  • 鉄欠乏性貧血ではなさそう → 薬剤性貧血の可能性は?
  • リンヴォックが原因の貧血はヘモグロビン値が8未満になったら投薬を中断すればいいみたい
  • 貧血によい栄養素は鉄分・ビタミンB12・葉酸・ビタミンCの他、たんぱく質・ビタミンB2など

今回の血液検査の数値

 少しずつ少しずつ下がってきたヘモグロビン値、今回の血液検査では9.8だった。

 先月と同じく「また貧血の値が下がった気がするんですけど。リウマチで貧血になるんでしょうか?それともお薬の影響でしょうか?」と先生に聞いてみたが、先生もこれまた先月と同じく「メトトレキサートならわかるがリンヴォックは考えにくい」「もっと下がったらどこか出血がないか調べてもいいかも」「食生活に注意しましょう」というアドバイスをいただいた。

 実は私、中学生時代からずっと女性特有の「鉄欠乏性貧血」だった。鉄剤を服用していたこともある。ただ子宮筋腫の手術で子宮全摘出してから、貧血はすっかり改善されたはずだった。MCV(赤血球の大きさ)とMCHC(赤血球1個あたりのヘモグロビン濃度)を見ると正常値なので、「鉄欠乏性貧血」でないことは想像がつく。そして先生も実は気にしてくださっているようで、2023年10月から「網状赤血球数」を測定項目に加えてくださっていたのだが、これが初めて”H”になっていた。

 貧血の種類について調べていたところ、「日本臨床検査医学会」のガイドライン1に次の表があった。私の今月の血液検査の数値だけ見ると、赤枠が当てはまるのかなと思う。

貧血|日本臨床検査医学会

 赤枠の原因の欄に出てくる「溶血性貧血」とは、赤血球が何らかの原因で壊されて溶け出してしまうことによって起こる貧血である。一番上にある「自己免疫性溶血性貧血」といえば、親しいお友達のチワワちゃんが発症して大変な思いをして闘病し数か月で命を失った恐ろしい病気。一瞬びっくりしたが、私の場合そこまで急激に数値が下がっているわけではないので、さすがにそれも考えにくい。だとすると、やはりその下にある「薬剤性溶血性貧血」が気になるのである。

薬剤性貧血とは

 そこで「薬剤性溶血性貧血」について調べていたら、厚生労働省のサイトにある「薬剤性貧血」という資料の「患者の皆様へ」2に、次のような記述があった。

 貧血の原因は様々ですが、医薬品も原因のひとつです。頻度はあまり高くありませんが、抗生物質、解熱消炎鎮痛薬、消化性潰瘍治療薬をはじめ多くの医薬品で、副作用として貧血を起こすことがあります。

「顔色が悪い」、「疲れやすい」、「だるい」、「頭が重い」、「どうき」、「息切れ」、ときに「狭心症」、「認知症」様の症状などの症状がみられた場合で、医薬品を服用している場合には、放置せずに、ただちに医師・薬剤師に連絡してください。
医薬品による貧血は、飲み始めてから比較的すぐに起きる場合と、数ヶ月後に起きる場合があります。上記の症状が出た場合には、医療機関を受診し、貧血がないかどうかの血液検査を受けることが勧められます。このとき、服用中の医薬品、最近まで服用していた医薬品名を担当医師に伝えるため、お薬手帳を持参してください。
貧血がおきる原因は様々ですが、貧血と診断され、原因を精査した上でなお医薬品が原因と考えられる場合には、可能性の高い医薬品の服用を中止することになります。中止により、多くの場合、1~2週間で治ります。なお、貧血が生じる可能性が非常に高い医薬品を服用する場合には、あらかじめ医師から説明を受け、定期的に血液検査を受けることが望まれます。

 「疲れやすい」「だるい」「頭が重い」のはもうずっとなのだが、こればかりはうつ病の症状でもあり関節リウマチの症状でもあり加齢によるところもあるので、症状の程度がわからない。「顔色が悪い」については、もともと顔色が悪い人なので変化がわからない。ただ歯の詰め物が取れて歯医者さんに行った時、先生に「いま貧血でしょ!歯茎が真っ白!麻酔かけない方がいいね!」と言われるなど、見る人が見れば”顔色が悪い”状態なのかもしれない。

 そしてこの資料には、次のような説明もあった。

これらの症状の程度は、貧血の程度と、貧血が急に起きたのか、ゆっくり進行したのかによって違います。

 そうなのだ。急激に悪化しているわけではないので、おそらく体が慣れてしまっているのだ。慣れて対応できているうちは大丈夫なのかなとも思ったり。

処方薬の説明文書を見てみよう

 私がここのところ飲んでいる強めの薬と言えば、関節リウマチのためのJAK阻害薬「リンヴォック」と、線維筋痛症のような痛みのための鎮痛薬「トアラセット」がある。これらの薬、実際に貧血の副作用は報告されているのだろうか。製薬会社から出されている添付文書を調べてみた。

リンヴォック

 リンヴォック錠の添付文書3 によればヘモグロビン減少の副作用があったが、頻度はわずか0.5%であった。

11.1.3 好中球減少(2.9%)、リンパ球減少(1.7%)、ヘモグロビン減少(0.5%)
好中球数:本剤投与開始後、1000/mm3未満になった場合には、1000/mm3以上となるまで本剤の投与を中断すること。
リンパ球数:本剤投与開始後、500/mm3未満になった場合には、500/mm3以上となるまで本剤の投与を中断すること。
ヘモグロビン値:本剤投与開始後、8g/dL未満になった場合には、8g/dL以上となるまで本剤の投与を中断すること。

 確かに頻度が少ないので先生が考えにくいとおっしゃるのも理解できるのだが、全くないわけでもないのが気になっている。実際リンヴォック錠の適正使用情報4 によれば、調査をおこなった2,732例のうち27例(0.99%)に血液およびリンパ系障害の有害事象が発現し、うち3例は重篤な副作用とされている。

 とはいえ少なくともヘモグロビン値は8.0未満にならなければ投薬中断しなくても良いらしい。私は9.8なのでまだまだ大丈夫。これは安心材料である。

トアラセット

 トアラセットの添付文書5 によれば貧血の副作用は1~5%、ヘモグロビン減少は1%未満であった。

その他の副作用(抜粋) 5%以上1%以上
5%未満
1%未満頻度不明
肝胆道系障害肝機能検査異常
血液及びリン
パ系障害 
貧血
臨床検査体重減少、血中CPK増加、血中尿素増加、血中トリグリセリド増加、血中ビリルビン増加、尿中血陽性、尿中ブドウ糖陽性好酸球数増加、白血球数増加、ヘモグロビン減少、尿中蛋白陽性、血中クレアチニン増加、血中ブドウ糖増加、血小板数増加、血中クレアチニン減少、血中尿酸増加、好中球百分率増加
トアラセット 添付文書より

 こちらも頻度は少ないとはいえ、無きにしも非ず。いやでもこの”臨床検査”の項目とか、全ての医薬品にとりあえず書いてありそうなことばかりだから当てにならないかも。

貧血の変化を時系列のグラフにしてみた

 関節リウマチ患者さんはみなさん同じだと思うが、毎月の診察で詳細に血液検査をしているのでデータはたっぷりある。数字がこれだけ揃っていると無意識にグラフを作ってしまうのが理系の性、Excelで時系列のグラフを作ってみた。

 なんということでしょう。めちゃめちゃわかりやすいではないか。いや、お医者さんていつも数字ばっかり眺めてて(経過を見る表も数字ばっかり)それでよくわかるなと常々思っていたのだが、それって医学系の特徴なのだろうか。獣医さんとこも数字が並んでるイメージ。すごく簡単なことなので、病院のほうでグラフ化してもらいたいものである。

 でグラフを見ると、メトトレキサートを服用した事によるヘモグロビン値の低下はほぼないと言ってよさそうだ。それに対して、2023年7月にリンヴォックを飲み始めて2か月後から、ヘモグロビン・ヘマトクリット・赤血球数(グラフには含めなかったが白血球数も)がカクッと減少し、トアラセットを服用してからさらにやや下がっているようにも読み取れる。

 でもまあ確かに死ぬような値ではない。先生がおっしゃるように「食生活」でどうにかできる範疇なのだろう、知らんけど。逆に、私たち関節リウマチ患者にとって”お薬ガチャ”をくぐり抜けて当たった薬は、リスクよりベネフィットを取らざるを得ない部分が大きい。私にとってリンヴォックは4つ目にしてようやく効果が表れた神のような薬。トアラセットは線維筋痛症かもしれない私がすがっている薬。そうそう変えるわけにはいかないのである。

貧血によい食事とは

 という訳で先生の指示通り食生活に注意しようと思うのだが、鉄欠乏性貧血ではない貧血の場合は、特にどのような食生活を心がければよいのかを調べてみた。

 家来るドクターの「貧血に良い食べ物や飲み物とは」6 というブログ記事では、貧血に効く栄養素として鉄分・ビタミンB12・葉酸・ビタミンCの4つを上げている。

鉄分

✅赤身肉(牛肉や豚肉など)
✅レバー

ビタミンB12

✅魚介類(サーモン、マグロなど)
✅乳製品(ヨーグルト、チーズなど)

葉酸

✅レンズ豆・ほうれん草
✅キノコ類(しいたけ、まいたけなど)

ビタミンC

✅柑橘類(オレンジ・レモンなど)
✅トマト

 またサワイ健康推進課の「たんぱく質不足に要注意 貧血」7 によれば、たんぱく質ビタミンB2・ビタミンB6も重要だそう。

【ポイント1】鉄を摂る

ヘム鉄は溶けやすいため吸収されやすく、非ヘム鉄は消化吸収されにくいので、ヘム鉄で摂る方が効率的です。

【ポイント2】たんぱく質を摂る

たんぱく質は、赤血球の中のヘモグロビンの材料となる栄養素ですので、鉄と同様に大切です。肉や魚のたんぱく質は、非ヘム鉄の吸収を高めます。

【ポイント3】鉄入り補助食品を活用する

コンビニなどでも購入できる、鉄入りの飲料やお菓子などの補助食品でも、意外に鉄がたくさんとれます。

【ポイント4】いろいろな食品をバランスよく食べる

ビタミンB2、B6、B12、葉酸、ビタミンCなども造血や鉄の吸収にかかせません。

【ポイント5】ヘム鉄とビタミンCを一緒に摂る

ビタミンCは非ヘム鉄を吸収しやすい形に換える助けになります。

【注意】メトトレキサートは葉酸の体内での働きを抑制しています
枝豆、モロヘイヤ、ほうれん草、ブロッコリーなどは葉酸が多く含まれている野菜ですが、可食部100gあたりの葉酸は70~200μg程であり、茹でることで半減します。そのため葉物野菜などの摂取に神経質になる必要はありません。
レバーは、可食部100gあたり800~1000μgと葉酸含有量が多いため、過剰に摂取することは避けましょう。また、葉酸サプリメントも葉酸含有量が多いためMTX服用中は摂取しないようにしましょう。8

 総じて動物性食品がよいということになるが、脂質も心配だしカロリーも心配。そこで突然だがワタクシ、タンパク質やビタミンB12が豊富に含まれるチーズにフォーカスして調べてみた。世界チーズ商会の「チーズと健康」9 によれば、チーズもその種類によって栄養素の含有量が違うらしい。100gあたりのビタミンB12が多い順に、主なチーズ(乳製品)を並べてみたのが下の表である。

種類タイプビタミンB12
(mg)
たんぱく質
(g)
ビタミンB2
(mg)
カロリー
(Kcal)
プロセスプロセス3.222.70.38339
エダム硬質2.828.90.42356
パルメザン超硬質2.5440.68475
チェダー硬質1.925.70.45423
ゴーダ硬質1.925.80.33380
カマンベール白カビ1.319.10.48310
ブルー青カビ1.118.80.42349
普通牛乳0.33.30.1567
フレッシュモツアレラフレッシュ0.2618248
クリーム軟質0.18.20.22346

たんぱく質とビタミンB2とのバランスも見るとパルメザンチーズが優勝なのだが、あれは削って料理にかけるもの。普通にプロセスチーズか、エダムチーズ・チェダーチーズ・ゴーダチーズなどが良いようだ。ちょうどスーパーでチェダーチーズ100%のキャンディチーズを見つけたので、おやつ用に買っておいた。

チェダーチーズ100%のキャンディチーズ

ついでに肝機能の変化を時系列のグラフにしてみた

 ついでと言ってはなんだが肝機能の検査結果にも”H”が並んでいたので、Excelで時系列のグラフを作ってみた。

 おお、これまたわかりやすい。関節リウマチを発症してすぐはメトトレキサートを週に6mg服用していたのだが、薬剤性の肝機能障害とのことで減薬した経緯がある。グラフにしてみると、確かにその時は急激に数値が上がっていたのが視覚的にわかって面白い。

 気になるのは今年に入ってから、γ-GPTなどが少しだけ基準値より高いこと。今年に入って増えた薬は、更年期障害のためのル・エストロジェルとトアラセットだけである。

 ル・エストロジェルの添付文書10 によれば、肝機能異常(AST増加、ALT増加、ALP増加)の頻度は1%未満であった。トアラセットについては前述の表のとおりで、肝機能検査異常の頻度は5%以上。

 お薬が多かれ少なかれ肝臓に負担なのは百も承知。これだけたくさんの薬を飲んでいたら(抗うつ薬や睡眠薬などもあるので10種類以上飲んでる)そりゃ肝臓も悪くなるというもの。ただグラフで見てもわかるように大した悪化でもないので、様子見でよいのだろう。引き続き注意して見ていきたいと思う。

まとめ

 長くなってしまったが、最後にまとめ。ここのところの血液検査でじわじわとヘモグロビン値が減っている気がしたので、それについて原因や対処法を調べてみた結果、次のようなことがわかった。

  • 鉄欠乏性貧血ではなさそう → 薬剤性貧血の可能性は?
  • リンヴォックが原因の貧血はヘモグロビン値が8未満になったら投薬を中断すればいいみたい
  • 貧血によい栄養素は鉄分・ビタミンB12・葉酸・ビタミンCの他、たんぱく質・ビタミンB2など

 引き続き治療を頑張りつつ、検査結果を自分でもしっかりチェックしながら、バランスの良い食生活を心がけていきたい。


  1. “診断群別臨床検査のガイドライン2003 ~医療の標準化に向けて~”. 日本臨床検査医学会. 平成15年11月. p150-154. https://www.jslm.org/books/guideline/36.pdf(閲覧日2024.10.19) ↩︎
  2. “重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤性貧血(溶血性貧血、メトヘモグロビン血症、赤芽球ろう、鉄芽球性貧血、巨赤芽球性貧血)”. 厚生労働省医薬食品局安全対策課 重篤副作用総合対策検討会(第3回)配布資料. 平成19年3月22日. p5-7. https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0322-10e.pdf(閲覧日2024.10.19) ↩︎
  3. “リンヴォック錠”. アッヴィ合同会社. 2024年9月改訂. 第14版. p4. https://a-connect.abbvie.co.jp/-/media/assets/pdf/products/rinvoq/Rinvoq_tmpDocument.pdf(閲覧日2024.10.19) ↩︎
  4. “リンヴォック®錠 適正使用情報 vol.4”. アッヴィ合同会社. 2024年3月作成. p30. https://a-connect.abbvie.co.jp/-/media/assets/pdf/products/rinvoq/clinical/research/proper_use_information4.pdf(閲覧日2024.10.19) ↩︎
  5. “トアラセット配合錠「KMP」”. 共創ファーマ株式会社. 2024年6月作成. 第3版. p4. https://www.kyosomirai-p.co.jp/medical/pdf/toaraset-di.pdf(閲覧日2024.10.19) ↩︎
  6. “貧血に良い食べ物や飲み物とは|チョコレートが効く理由”. 家来るドクター. 2023年08月17日(2024年8月6日更新). https://iekuru-dr.com/blog/anemia-tabemono/(閲覧日2024.10.19) ↩︎
  7. “たんぱく質不足に要注意 貧血”. サワイ健康推進課. 2012年6月(2024年3月改訂). https://kenko.sawai.co.jp/healthcare/201206.html(閲覧日2024.10.19) ↩︎
  8. “MTX服用中の葉酸摂取について”. 湯川リウマチ内科クリニック. https://yukawa-clinic.jp/knowledge/lifestyle/meal_folic-acid.html(閲覧日2024.10.19) ↩︎
  9. “チーズと健康”. 世界チーズ商会株式会社. https://www.sekai-cheese.co.jp/チーズの情報/チーズの知識/栄養価-健康効果/(閲覧日2024.10.19) ↩︎
  10. “ル・エストロジェル”. 富士製薬工業株式会社. 2022年3月改訂. 第4版. p3. https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00053549.pdf(閲覧日2024.10.19) ↩︎

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