上手に諦める

テレビ

 昨日もまた「クローズアップ現代」を見た。「“折れない心”の育て方 ~「レジリエンス」を知っていますか?~」という内容だった。

 就職や進学など、多くの人が新たな環境へ踏み出す人4月。状況に馴染めず、鬱や心の病に陥るケースも少なくない。そういったストレスに晒される状況でも“折れない心”をどうやって育むことができるのか、今、企業や教育界の注目が集まっているのが、心の折れにくさを表す概念として提唱される「レジリエンス」(復元力)。

という番組紹介を読んで興味を持ったのだ。
 番組冒頭の「ネガティブな面だけでなくポジティブな面を見出すことが出来る人が逆境を乗り越えることができる」というイローナ・ポニウェル博士(心理学者)の言葉には納得したが、VTRの中で心が折れやすい人を逆境力がないと決めつけているような部分は少しおかしいのではないかと思った。例えば心の折れやすい人と折れにくい人の違いを明らかにしようとする埼玉学園大学の小玉正博教授の実験。けん玉で初心者には困難な課題に挑戦させ、その課題にどう向き合うかを観察するものだった。20分ほどで諦めてしまう”心が折れやすい人”に共通するのは感情の起伏が激しいことと自分を過小評価していることだという。こういう人達は逆境力がないと言わんばかり。でも言っておくが、私はこの手の実験では絶対に諦めない。何時間でも何日でも挑戦し続けるタイプだ。だからこそ肉体と精神の限界まで自分を追い詰めてしまい、気がつかないうちにうつ病になってしまったのだ。むしろ”すぐ心が折れる”ことのできる人はある意味で精神的に強いと思うけれど。
 などと頭をひねりながら番組を見ていたら、やはりスタジオで国谷キャスターが精神科医の大野裕先生(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター長)にこう尋ねていた。「20分で諦めた人がみんなそうかっていうと、どうなのかなと思ったりするんですけど?」これに対して大野先生の答え。

 私なんかはたぶん諦める方だと思うんです。自己弁護をさせてもらうと、これやったってたいした事ないやって思えば諦めることもまた1つ意味がある。自分にとって大切でないって判断して諦める力、それもやはり大事な心の力だと思います。(心が折れにくくなるための一番大事なことは)自分にとってそれが大切かどうかっていうのを客観的に考える力。

ああ、これで納得できた。やはり諦めることは大事なのだ。私のようながむしゃらタイプでうつ病予備軍の人にとっては、この番組タイトルだけでは誤解があると思うので注意しなければならない。
 詳細は省略するものの、VTRでまとめていたレジリエンス(逆境力)の4つの要素は「感情のコントロール」「自尊感情」「自己効力感」「楽観性」なのだが、大野先生はこれに「人間関係」も加えていた。

 4つの要素は個人の力として大事。一方で、私たちは1人で生きてるわけではなくて他の人と一緒に行きてますから、他の人と一緒に生きる力も大事。

 またレジリエンスを高める具体的な取り組みの例として、「逆境グラフ」を書くというものがあった。自らの人生の浮き沈みをグラフにし、その時の状況や気持ちを書く。過去の体験を見つめ直す事によって、自らの逆境力や周囲の人達の支えを再認識することができるというものだ。辛い体験は必ずしもマイナスだけではなくなるのだという。ただ、これに関しても大野先生は注意を促す。

 逆境を見出すことでもう一度心が傷つく方もいらっしゃる。その場合にはせっかく抑えていらっしゃる記憶を表に出すのはあまりいいことではない。「忘れる力」も私たちの心の力ですので、そういうのも大切にしながらやっていく必要がある。

 結局30分間番組を通してみた感想は、番組冒頭の”いかに折れない心が大切か”などという話より、番組最後の大野先生のまとめの言葉が最も心に響いた。

 まずは、何が大切なのかを自分の中で客観的にきちんと把握して、目の前の成功失敗に一喜一憂せず、その大事なもののために諦めないで頑張る。それ以外のところは上手に諦めることが大事。もう一つは、1人で頑張る力は限られているので、他の人と一緒にそういうことができる環境を作ることも大事。

国谷キャスターの「誰かに訴えるのは大変かと。周りの人は忙しいし・・・」という問いかけに対しては

 人にとって一番幸せなのは、人のために何かできることなんです。思い切って声をかけていただくとご自分にとっても楽になりますし、その人もその方に対して何かができるという幸せ感を感じられることができるし、両方が幸せになれる第一歩だと思う。

本当にそんな人ばかりなのだろうかと不安にもなるが、少なくとも私は頼られるのは嫌いではない。誰かのために何かをするのは大好きである。場合によってはwebサイトを使うのもいいという事なので、例えばこういうブログを使って頼り頼られするのもいいではないか。

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