リラックスするのはむずかしい

健康

 先日、顎関節症の治療の1つとして「リラックスを促す貼紙をすること」を書いた。普通の人は会話や食事以外では上下の歯をくっつけていないらしいのだが、顎関節症患者の7-80%は普段から強く噛みしめていないまでも、上下の歯を触らせたままにしてしまっているらしい。この癖を治すことが治療の1つなのだという。
 そんなの貼紙なんかしなくても、気をつけてれば治せるじゃない。そう思ってバカにしていたのだが、1日意識して頑張っていてもどうしても痛みが引かないので、藁にもすがる思いで貼紙をしてみることにした。付箋紙に「あごリラックス」と書いて、日中のほとんどを過ごしているリビングには多めに、他にもキッチン、トイレ、洗面所、廊下などなど家中10ヶ所以上に貼ってみたのだ。
 その結果、私は全然リラックスできていなかったことを痛感せざるを得なかった。付箋紙を見るたびにハッと我を振り返るのだが、たいてい眉間にしわをよせて口元をきゅっと引き締めていることに気づく。「リラックス」とつぶやいてゆるく微笑んでみると肩の力が抜けるようだ。そしてもう1つの発見は、実は四六時中頭が痛いわけではなかったということ。付箋紙を見つけたときの多くの瞬間で、「あれ?そういえば今は頭痛くなかったよね?」と思い知らされるのだった。そんな事を繰り返していたら精神的にも効果があるようで、なんだか安らかに日中の1人の時間を過ごせた気がする。すると不思議なもので、あんなに痛かった頭痛の時間が明らかに減ったのである。顎関節症は精神的なものも大きな要因の1つというのがうなずける。
 どうやらリラックスと言うのは意識してできるものではないらしい。いつもリラックスの事ばかりを考えていると逆に緊張してしまうのだという。これは顎関節のリラックスだけではなく、精神のリラックスでも同じなのではないかと思う。うつ症状がひどいと憂鬱なことばかり1人思い悩んでしまい、考えないようにしようと思えば思うほどその事ばかりを考えてますます泥沼にハマってしまう。そんな時にこの「付箋紙療法」は意外と効果的なのではないだろうか。例えて言うなら誰も味方がいないと思っている時に、自分の事を全てわかってくれているもう1人の自分から「大丈夫だよ」と言われているような気分。起きている間すべての時間が憂鬱だと思っていても、付箋紙を見るたびに実は何も考えていない時間もあるのだと気づくのも新しい発見だと思う。
 ちなみに付箋紙を貼ったことは忘れること、一週間経ったら貼る場所を変えること、だそうだ。

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顎関節口腔機能学分野
次世代の顎関節症治療を考える会
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