X(旧ツイッター)を見ていると、デマにすぐ飛びついてリプライしたり拡散したりしている人の多いこと。そしてデマ拡散人のプロフィールを見ると「おばさんです」と書いてる人の多いこと。どうしてこう早とちりをするおばさん(以下「おばさんX」と呼ぶ)が多いのだろう。おばさんに対する風評被害である。同じおばさん枠に属する者としては、頭を抱えるしかない。1
古今東西「おばさんX」という生き物は暇を持て余すと、古くは井戸端会議、ちょっと前はテレビや週刊誌、そして今はYouTubeに時間を費やし、そこから得た話にずっとずっと騙されてきた。騙されてきたと言っていいのだろうか。決して日本語が不自由な訳ではないのにどうしてデマを信じてしまうのかというと、論理的思考ができないからに他ならない。
例えばテレビでコメンテーターが次のように言っていたとする。
AはBではない
一般的にBならばCだ
だからAはCではないと思う
これを聞いた「おばさんX」は短絡的に
AはCじゃないんだって!テレビで言ってた!
と信じて拡散してしまうのだ。さらには自分と意見が違う人への攻撃までセットで。
「AはCかもしれない」と言ってる馬鹿がいる!バーカバーカ!
でもちょっと待って。数学の「論理」の授業で習ったはずの「命題」「必要条件」「十分条件」etc…を思い出して欲しい。
(定理)元の命題とその対偶の真偽は一致する
「AならばBである」
〇「BでないならAではない」(対偶)
✖「BならばAである」(逆)←とは限らない
✖「AでないならBでない」(裏)←とは限らない
「AならばBである、は誤り」
〇「BでないならAではない、は誤り」(対偶)
✖「BならばAである、は誤り」(逆)←とは限らない
✖「AでなければBではない、は誤り」(裏)←とは限らない
正しくこの論理的思考ができる人は、前述のテレビを見ていて「ひどい印象操作だな!」と思う。なぜならコメンテーターの発言からわかることは最初の2行のみで、3行目の「AならばCではない」というのはコメンテーターの憶測(なんなら願望?)でしかないのだ。そこに気づけない「おばさんX」は騙されたとかじゃなくて、論理的思考ができてないと言わざるを得ない。
AとかBとかじゃなくて具体的に言葉を入れるとわかりやすいかも。
A(鳥)はB(魚)ではない
一般的にB(魚)ならばC(生き物)だ
だからA(鳥)はC(生き物)ではないと思う
ね?おかしいでしょう?正しくは「B(魚)でないならC(生き物)ではないとは限らない」である。
とすると、こういう場合はどうだろう。
(個人のボランティア)は(会社業務の選挙運動)ではない
一般的に(会社業務の選挙運動)ならば(選挙違反)だ
だから(個人のボランティア)は(選挙違反)ではないと思う
(SNSの戦略的な運用)は(機械的作業)ではない
一般的に(機械的作業)ならば(ボランティア)だ
だから(SNSの戦略的な運用)は(ボランティア)ではないと思う
練習がてら、正しい論理的思考を導き出していただきたい。
※特定の個人や団体とは関係ありません。あくまでも例文です。
これぐらいならまだ余裕という方も、次のような論法はどうだろうか。
C「AはBである」
Cは嘘つきだ
だからAはBではない
昨今はこんなトークで他人を批判するYouTuberばかりで辟易する。テレビではまだ「と思う」「かもしれない」などと可能性を残した言い方をする人が多いが、YouTuberはとにかく話題になりたいのか断言口調が多い。タイトルには”新事実!”などと派手に大きな文字が並び、これにすっかり騙されてしまう「おばさんX」たちは「YouTubeで真実を知りました!」とガンギマリの目で熱く語るのである。
でもちょっと待って。さっきやりましたよね。「AならばBである、は誤り」の対偶は「BでないならAではない、は誤り」である。
言葉を入れてみよう。
C「A(鳥)はB(飛べ)る」
Cは嘘つきだ
だからA(鳥)はB(飛べ)ない
ね?おかしいでしょう?正しくは「B(飛べ)ないならA(鳥)ではない、は嘘だ」である。飛べない鳥もいるというだけ。しかもいくら嘘つきな人だって発言が100%嘘とかありえないのだから、断言するのは何にしろ違う。
だから「おばさんX」予備軍の方は、「とは限らない」を意識して考える癖を身に着けることをおすすめする。XやYouTubeで検索するときも「おすすめ」ばかり見ていないで「そうではない他のコンテンツはないのか?」を気にしながら調べるのがよい。そしてオールドメディアと馬鹿にしているテレビや新聞も一次情報としては正確なので、見出しだけではなく内容までしっかり見ること、本文までしっかり読むこと。それだけでもデマに騙される確率は格段と下がる。
ここまで読んで『私ってもしかして「おばさんX」なのでは!?』となってる方、大丈夫!あなたは「おばさんX」ではない。ちゃんと自分を疑い「かもしれない」という考え方ができているのだから。そしてこのしがないブログを見出しだけでなく、ここまでしっかり読んでくださっている方なのだから。本当の「おばさんX」は『あなた騙されてない?』と言われるとお顔を真っ赤にして『私は騙されてなんかいません!ちゃんとYouTubeで調べて事実を聞いたんだから!騙されてるのはそっち!』としか言わないと思う。本当に伝えたい人には全く届かないジレンマ オブ ジレンマ。
最後になるが、数年前まではデマに騙され拡散するのはほぼ「おばさんX」だったと思うが、昨年ごろから「Z世代X」という生き物も多数確認されている。やはり論理的思考が苦手なようで、話し方がかっこいいというだけでYouTuberに心酔するらしい。Z世代への風評被害である。
- 全てのおばさんがデマに騙されるとは限らない。デマに騙される人がおばさんとは限らない。私もデマに騙されるかもしれないし、拡散するかもしれない。これを言っておかないと勘違いする人がいるので。 ↩︎
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